10年越しの片想い

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 そろりと隣に視線を向けると、頬杖をついたリクくんがちょっとだけ驚いたように私を見ていた。やがて、端正な唇がにひっと歪んで、にゅっと腕が伸びてきて。 「やっと笑った」  節くれだった大きな手が、ぽんと頭に乗せられて。それと一緒に私の胸も、ぎゅーっときつく絞られて。煩わしい胸の音をごまかすように、ビールをゴクゴク飲み干した。  お酒、本当はあんまり好きじゃないんだけど、ミッションを完遂するには酔いの力も必要だ。頭を撫でる彼の手をそっと払いのける。 「……今は、こういうのもセクハラになるんじゃないですか」 「大丈夫、他の子になんてしないから」  払いのけたはずの手が、前髪をふわりと撫でた。 「まあちゃんだけだよ」  リクくんの目に、今の私はどんなふうに映るんだろう。  優しげな弧を描くその瞳に、ほんの少しでも甘さがやどってくれたなら――。 「柳澤さんにとって、私ってなんなんでしょうね」  ポツリと呟いた私を見て、リクくんはふんわり微笑んだ。 「まあちゃんは、まあちゃんだよ」 「答えになってません」 「そういわれても、そんな単純にカテゴライズなんてできないよ。なにせまあちゃんは、僕にとって唯一無二の存在だからね」 「……なんですかそれ」  何度払いのけても髪に手を伸ばしてくるので、諦めてされるがままになっていると、リクくんの指が頬を伝い、私のあごを指でついと持ち上げた。 「じゃあ逆に聞くけど、まあちゃんにとって、僕は一体なんなんだろうね?」  吐息がかかるほどの距離。瞳をじっと覗き込まれて、思わずコクリと喉がなる。  睫毛、長いな。肌なんて女の子よりキレイだし、唇だってつやつやで……。 「……ほら、答えられない」  あ、まずい。見惚れて返事するの忘れてた。 「ち、違います! そんなんじゃなくて…」 「じゃなくて?」  ちょっ……と待って、なんで顔寄せてくるかな!? 息がかかる!! 唇ちっか!! てか、薄く開いて舌まで見えて、もしかしなくてもこれ、キス顔っていうんでは!?  「まあちゃんにとって、僕は、なに?」  ますます近付く彼の顔から逃れようとするが、優しげな笑みとは裏腹に、リクくんは私の顎をしっかり押さえてそれを絶対許さない。ダメだこれ、言うまで絶対離さないやつ!!
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