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そろりと隣に視線を向けると、頬杖をついたリクくんがちょっとだけ驚いたように私を見ていた。やがて、端正な唇がにひっと歪んで、にゅっと腕が伸びてきて。
「やっと笑った」
節くれだった大きな手が、ぽんと頭に乗せられて。それと一緒に私の胸も、ぎゅーっときつく絞られて。煩わしい胸の音をごまかすように、ビールをゴクゴク飲み干した。
お酒、本当はあんまり好きじゃないんだけど、ミッションを完遂するには酔いの力も必要だ。頭を撫でる彼の手をそっと払いのける。
「……今は、こういうのもセクハラになるんじゃないですか」
「大丈夫、他の子になんてしないから」
払いのけたはずの手が、前髪をふわりと撫でた。
「まあちゃんだけだよ」
リクくんの目に、今の私はどんなふうに映るんだろう。
優しげな弧を描くその瞳に、ほんの少しでも甘さがやどってくれたなら――。
「柳澤さんにとって、私ってなんなんでしょうね」
ポツリと呟いた私を見て、リクくんはふんわり微笑んだ。
「まあちゃんは、まあちゃんだよ」
「答えになってません」
「そういわれても、そんな単純にカテゴライズなんてできないよ。なにせまあちゃんは、僕にとって唯一無二の存在だからね」
「……なんですかそれ」
何度払いのけても髪に手を伸ばしてくるので、諦めてされるがままになっていると、リクくんの指が頬を伝い、私のあごを指でついと持ち上げた。
「じゃあ逆に聞くけど、まあちゃんにとって、僕は一体なんなんだろうね?」
吐息がかかるほどの距離。瞳をじっと覗き込まれて、思わずコクリと喉がなる。
睫毛、長いな。肌なんて女の子よりキレイだし、唇だってつやつやで……。
「……ほら、答えられない」
あ、まずい。見惚れて返事するの忘れてた。
「ち、違います! そんなんじゃなくて…」
「じゃなくて?」
ちょっ……と待って、なんで顔寄せてくるかな!? 息がかかる!! 唇ちっか!! てか、薄く開いて舌まで見えて、もしかしなくてもこれ、キス顔っていうんでは!?
「まあちゃんにとって、僕は、なに?」
ますます近付く彼の顔から逃れようとするが、優しげな笑みとは裏腹に、リクくんは私の顎をしっかり押さえてそれを絶対許さない。ダメだこれ、言うまで絶対離さないやつ!!
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