桜舞う季節。彼女がついた嘘。

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 桜舞う、この季節がやってくると、否が応でも思い出す記憶がある。  陽光のもとキャンバスを前にして筆を持ち、桜の木を見上げていた少女とこの場所で出会ったのが今から五年前。  あの頃俺は、完全に人生に行き詰っていた。  先の見えない暗闇のなかで、膝を抱えうずくまっていた。  だが、彼女と出会ったことで確かに俺は救われ、そして、今の自分があるのだと思う。例えるならば、そう、彼女の存在が光明となって。  これから俺は、俺の人生のなかで出会った、大切な少女の話をしようと思う。  少女の名は──立花玲(たちばなれい)。 *
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