桜舞う季節。彼女がついた嘘。

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 それから俺は、まあひたすらに小説を書いて──なんてことはなく、一心不乱に水彩画を仕上げた。  今まで忘れていた情熱をキャンバスの上に叩き付けるように、ただ無心で。  玲とは、別れた二日後に早速連絡を取り合った。「進捗どう?」「まあ、ぼちぼちかな」そんな感じの事務的なやり取りでこそあるが、早めに連絡しておかないと、早々に関係が自然消滅しそうで怖かった。  自分の感情が恋心なのか。それとも男女の友情なのか。自分でもよく理解できていなかったが。  男、高坂二十九歳。   久々にやってきた女性との繋がりに、心が弾んでいたことは否めない。 *
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