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その日は雪が降り続いていた。
「早く、早く……」
白い毛に包まれたドラゴンはその中を飛んでゆくーー
「あいつらなんかに捕まってたまるか」
腕の中には中学生くらいの少女。
「絶対僕が守るからね……」
少女の目にはうっすらと涙のあとが残っていた。
しかし、後ろから小型のドラゴンたちが咆哮を放ってくる。
「うわっ!」
咆哮はドラゴンの翼に直撃する。
バランスを崩すのを見た小型のドラゴンたちは違った方向へ向かっていく。
少女を抱えたドラゴンは意識を失った。
ーーこれは昔、はるか昔のお話です。
太平洋のど真ん中に巨大な隕石が落ちてきました。その隕石によって世界は一変してしまいました。
「どうして?」
幼い少年が母親に聞いた。
「続きを読めば分かるわよ」
母親はその少年に微笑み、優しく頭を撫でた。
そして本の続きを読み始めた。
その隕石にはドラゴンの種が沢山詰まっていました。
種から生まれたたくさんのドラゴンたち。
世界はドラゴンたちに支配されてしまいました。
街は炎の中に消えていったりと大変な目にあいました。
ですが人々は諦めませんでした。
WD、世界ドラゴン対策機関が作られ、ドラゴンによる被害を減らし、ドラゴンとの共生を目指すことになりました。
「そこに父さんも入っているんだよね?」
「そうだ。ドラゴンと言っても仲良いドラゴンもいる。そのドラゴンたちも協力しているんだ」
確かに父の膝の上には赤いドラゴンがいた。
だが、父の突然の死によってそのドラゴンは姿を消した。
何も言わずに。
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