知型

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昼休みのことが気になって授業を受けていてもなかなか頭に入らない。 「竜樹、しっかりしろ」 横からガリマーが口出し、集中しなければと思うのだが変わる気配はない。 教室は静かでチョークのコツコツと言う音が響くだけ。 「だからこうであり……」 コツ、とチョークの音が止まった。 その瞬間に先生は顔をしかめる。 「岸田先生、体調悪いんですか?」 一人の生徒が言う。 「ああ。朝から頭が痛くてな……病気か?」 「無理したらダメってよく先生は言いますけど先生も同じですよー」 「そうだな、明日くらいに病院でも行ってくるか」 そんな余談もあったが先生は授業を再開した。 「……」 隣をちらりと見るとガリマーが厳しい表情を見ていた。 「ガリマー、どうしたんだよ?」 誰にもバレないような声で尋ねる。 「あの教師、知型が操っている可能性があるかもしれないな」 ガリマーの言葉を聞いて俺は先生を睨みつけた。 「それでもまだ可能性だ。竜樹、授業が終わったらなるべく目を離さないようにするぞ」 「分かった」 少し離れた席に座っている陽菜乃がこっちを見ているのに気づいた。 きっと向こうも先生の異変を察知しているのだろう。 俺が頷くと向こうも頷き返した。 授業終わりのチャイムが鳴る。 「竜樹!」 「やっぱりそっちも感じた? 先生の異変」 「分かってる。先生の様子、絶対おかしい」 先生が教室を出ていくのと同時に俺たちは後を追う。 「……まさか先生が、な」 「うん……気持ちは分かる」
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