一章 出会い

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あっちに行かなきゃいけないような気がする。 そう思い俺は自然と席を立とうとした。 だが、誰かに袖を引っ張られ全員が座っている中目立つことは無かった。 「大丈夫だよ、上城くん」 それは隣の席の少女。 たしか白露(しらつゆ)さんだ。 「え……でも」 戸惑いながらも白露さんが見つめる先、在校生席を俺も見つめた。 「すみません! あいつ、東京支部の連れでして!」 一人の在校生が席を立った。 遠目からでも隣にはドラゴンがいることが分かる。 「彼は? 知っているんだろ」 「九重(ここのえ)涼先輩。有名な九重財閥の御曹司」 目がとび出そうになった。 「そしてWD。ドラゴン対策機関、東京支部の一人」 それじゃあ、あの黄色いドラゴンはパートナーなんだ、そう感じる。 「え、ちょっと待って。そんなことを知っている君も?」 白露さんは何も答えずウインクだけ返した。 「ガリマーの馬鹿っ」 「まぁまぁ、そう怒るなよ、涼」 「凄い恥ずかしかったんですけど……」 ガリマーは涼の反応を見てニヤリと笑う。 「で、所長とでも喧嘩したのか」 「記憶を消すのが嫌で逃げてきただけだ。そうしたら今日入学式だったの思い出してな」 「なんていう自由人。いや、自由ドラゴンか」 『えー。みなさん、お騒がせしました。入学式を再開します』 アナウンスが聞こえ、また静寂な状態に場が戻る。 やっと再開かとため息をついた。
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