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どん。
衝撃波が襲う。私の衣をその勢いのままに引っぺがし、みすぼらしい内側を曝け出す。
誰にも見られた事のない、分厚い衣の下の本当の私。
真の暗闇の中、最早誰も見る事が叶わないだろうが、それでも私は言い得ぬ感覚に襲われる。
それも束の間、更に強い衝撃波は私の体を一瞬で粉々に砕き、塵へと変えた。
そのまま光の届かぬ空間を、亜光速で吹っ飛ばされていく。
体は散り散りとなり、しかし暗闇の中で意識だけが拡散していくのを感じる。
――あぁ、これが私の終わりなのだ。
寂しさもあったが、しかしただただ静かにそう思えたのだ。
だが、私に衝突したガスの内、幾分かが私に語りかけてきた。
――これは別に、終わりではない。
そう語りかけてくるのは、かつて私の隣にいた奴だ。彼もまた、その巨大な体をガスに変え、そして私と入り交じっていく。
――こうして新しい星が生まれるのだ。だから、何も寂しくはない。
かつて“火星”と呼ばれた彼の声は徐々に薄れて消えていく。ガスの拡散と共に彼自体も薄れてなくなってきているのだ。
だが、彼の言葉に、私が感じていた寂しさは打ち消された。
太陽の周りをくるくると回り続けた百億年。地球と呼ばれた星が飲み込まれ、やがて来るべき死が今日来た。それだけだ。
そして私達の死体が、やがて再び凝集し、新たな星を生み出す。それだけなのだと気付いたのだ。
「そうだな、次に生まれ変わるなら、かつて地球と呼ばれた星のようになりたいな」
そう思うと、かつて木星と呼ばれた私という意識は闇に溶け、消えてなくなった。
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