赤い髪のスピードスター #井伊直政

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 思わず無言で壁際により、誰なのか確かめようとベッドから足を下ろしたときに目を疑った。自分の素足が見えたのだ。昨日は確か、お気に入りの新品のワンピースを着ていて、それは割と丈が長かったはず。  恐る恐る掛け布団をめくると、そのワンピースがない。上のブラウスと下着のパンツはある。ブラウスに関しては、寝転んでいたせいでシワが付いたが、それはもういい。それどころではない。  大きな声を出し叫びたかったが声が出なかった。アワアワと口を動かす事しかできない。 近場にワンピースがなかったため、掛け布団を腰に巻いてベッドから静かに降りた。そしてコツンと何かがあたる。自分の鞄だ。  慌てて携帯を探り出し電源を入れると、すぐに知人とのメッセージ画面が現れた。そのうちの一人、まだ仲が良いと言ってもよい後輩に電話をする。震えた声で。
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