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「いい感じじゃないですかあ。先輩、そういう時は、お礼にってご飯に誘うんですよ。」
そんな彼女の助言を頭に入れながらも、体を起こし開けっ放しのカーテンから見える窓の外を呆然と見る男を眺めることしかできない。
次第に男は何かを探すように、手探りで自分の眠っていたソファを触ったあと、ふと華のほうを見た。そして目があった。それに驚いた華は誤って頼り綱としていた電話を切ってしまう。
「……あんた誰だっけ。」
「ひいいい!この変態!なんで冷静なのよ!こんな事してただで済むと思ってんの?!ひいいい!!」
ベッドわきにあったくネズミのキャラクターのぬいぐるみを、男に何度も叩きつけているうちに、華は後輩の言葉を思い出して手を止めた。
小慣れた女性は、お礼と言ってご飯に誘うらしい。
「お礼って何よ!何のお礼なのよ!」
「は?!なに?!あ、思い出した。ちょっと落ち着けって!」
ネズミのぬいぐるみを取り上げられた華は慌てて近くにあった漫画で頭を守る。
そのままの体勢で待っていたが何もない。そっと漫画を除けて様子を伺うと、眉間にシワを寄せて怪訝な顔をしている。よく見ると猫に似ている気もする。
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