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「疑うんだったら自分の鞄の中見ろよ。ゲロ臭えストッキング、ビニール袋に入れて、中に入れたから。そんな臭いやつに、なんかしようと思うわけねえだろ。」
そのままベランダに出てタバコを蒸す直政に言われた通り、華は自分の鞄の中を探ってみた。そこには確かに吐物のついたストッキングがあったのだ。
何故そんなに酔い潰れていたのか、尋ねられれば答えられないような理由、かつそれほどまでの醜態を晒してしまったことへの絶望が華を襲う。とりあえず、彼に礼を言わなくてはいけない。謝らなくてはいけない。
「有難うございました。ご迷惑をお掛けしてごめんなさい。」
今まで仕事以外で人に謝る事をしてこなかった華。その照れ臭さと恥ずかしさと悔しさと切なさと、あらゆる感情が入り混じった結果、彼女の声は涙声になり、涙があふれてくる。
まさか泣きながら謝られると思っていなかった直政は目を丸くした。一体どの言葉に関して涙を流しているのか、理解できない。
「おう。いいけど。何で泣いてんの?」
「ごめんなさい。お礼に、ご飯、行きましょ。」
「いや、その前に帰る方法考えろよ。これ乾くまで待つか?」
完全に涙を流す華に引いてしまった直政の提案に涙しながら頷き、ペットボトルに直接口をつけて水を飲む華。
髪もボサボサでヨレヨレの服のままの姿は、もうどう見てもお嬢様には見えなかった。
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