赤い髪のスピードスター #井伊直政

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 昔から姫のように扱われてきたのだから、普通のこと。周りの人間は自分のことを蝶よ花よと扱うべきなのだ。そうとすら思っている。  そして今日はそんな彼女の決戦の時。  自分のことを完璧だと誇る華だが、たった一つだけ人生に不満があった。それは未だに彼氏という存在を持ったことがないこと。二十代前半最後の歳となった彼女だが、まだ一度も誰かと交際したことがない。 「私に見合った男がいないからよ。」  そうやって鼻を鳴らし、同じくお嬢様育ちの友人に説明していた華だったが、実際のところは自分でも不思議なのだ。才色兼備である自分に何故恋人ができないのか。 「声は掛けられるでしょ?」  友人の質問に、愚問であるかのように髪を靡かせながら肯定するが、それはただの見栄。 男性に声を掛けられないわけではない。初見の男性には。ナンパとかいうやつは経験したことがある。  しかし長い付き合いになる大学のクラスやゼミの人間、果ては会社の人間にまで、真っ先に候補から外されてしまう。華は一人で楽しそうだからと。
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