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幼少期
パパが少し変わっているってことは保育園の時に気がついた。
その頃は、おばあちゃんもまだ生きていて、「二階建ての古い木造家屋」って言葉のよく似合うこの家に、三人で暮らしていた。
物心ついた頃にはもうママは居なかった。
小さな仏壇の奥にある写真立てには、ボーイッシュでよく日焼けしたママが今でもニコニコと笑っている。
おばあちゃんとパパはあまり仲が良くなかった。
おばあちゃんはいつも私に「不憫だ不憫だ」と言っていた。
不憫と言う言葉の意味は分からなかったけど、おばあちゃんが悲しそうなのであまりいい意味じゃないなくらいには思っていた。
事件は保育園のお便りをパパに見せたときに起こった。
「まぁー! お遊戯会があるの? みゆちゃんはなんの役かしら」
「えっとね、赤ずきんちゃん!」
「ええっ? ちょっと、主役じゃないの! すごいわ、みゆちゃん。ああ、みゆちゃんの赤ずきんちゃんだなんて。かわいいに決まっている。パパすっごく楽しみ!」
私を膝にのせてそう言ったパパに、おばあちゃんがすごい剣幕で怒鳴り付けたのだ。
「正一! まさか観に行くなんて言わないだろうね!? 母親がおらんってだけで肩身の狭いみゆに、おかしな父親が居るなんて知れたら、この子がかわいそうだとは思わんのかね!」
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