通学団

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通学団

「あら、かわいいわね。ひょっとして、手作り?」  初めての集団登校、朝から通学団の集合場所に集まると、緊張して固まっていた私に話しかけてくる人がいた。 「おはよう、うちの子も1年生なの、よろしくね!」  気さくに話しかけてくるお母さんとは対照的に、小柄な男の子はお母さんの背中にしがみついている。 「ねぇ、それ、ちょっと見せてくれる?」  そのお母さんは私のシューズバッグを手にとり、あちこち眺めまくる。 「凄いわね。お母さん、もうプロの腕前ね!」 「ママじゃない。パパが作ってくれた」  私はとっさに本当のことを答えた。 「ええ!? パパ? お父さんがこれ作ったの?」  目を丸くするその人の反応を見て、私はしまったと思った。  「ええか、誰が作ったか聞かれても本当のこと答えたらあかんよ。縫い物する男なんぞ、気味悪がられるかも知れんでね」 おばあちゃんにそう言い含められたのをすっかり忘れていた。  でもおばさんは変わらない様子で今度は手さげ袋をひとしきり眺めたあと、ニッコリ笑ってこういった。 「こんなかわいく手作りできるなんて、パパはお裁縫の天才だね!」
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