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鬼
とうとう桃太郎と雉之丞が鬼のところまでやってきました。もう鬼は目の前です。犬助と猿吉も桃太郎の姿を見つけて、お桃とともに駆け寄ってきました。
「さあ、観念しろ!」
桃太郎が剣を構え、鬼に近づいたとき、あることに気がつきました。
「あれ? 君も、僕と顔が似てる気が……」
「そりゃそうだ。俺はお前と兄弟なんだから」
赤鬼の言葉に桃太郎は仰天しました。
「兄弟!? 兄弟ってまさか……君も五つ子の一人なのかい!?」
「そうだ。俺は生まれたときからすべての記憶がある。桃から生まれて、一人以外は捨てられた。俺は捨てられたあと、いろんな家をたらい回しにされて、どの家でも奴隷だったよ。人間なんて、ひどいものさ」
「もしかして、それで鬼になってしまったのかい?」
赤鬼が頷くと、桃太郎は黙って剣を鞘に納めました。
「桃太郎……倒さないのか」
雉之丞が近寄って聞くと、桃太郎は頷きました。
「おじいさんおばあさんに大事に育てられた僕がこいつを倒すなんて、できないよ」
そして鬼に呼びかけたのです。
「僕たち一緒に暮せばいいじゃないか。兄弟がいるんだからもう一人じゃないよ。奴隷になることもない」
「……」
鬼から光が飛び出してきて、眩しさから桃太郎たちは思わず目を閉じました。そして桃太郎たちが目を開けると、桃太郎そっくりの少年がそこに佇んでいたのです。
「よかった! これで一件落着だ。これからは五人で暮らそう!」
桃太郎はそう兄弟に呼びかけ、それぞれの兄弟を見つめたとき、あれ?と思いました。
「五人?」
桃太郎は自分を取り囲んでいる人間を改めて見てみました。犬助、猿吉、雉之丞、お桃、鬼……そして自分……
「あれ? 六人いない?」
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