千の鶴を殺しても

10/55
前へ
/57ページ
次へ
ところが怒鳴られはせず、無言で代わりに盛られ、わけのわからぬまま作った品物は呼ばれた人がさっさと運んで行き、言われたままに、溢してしまったのを拭いていく。 教えてくれた人は、なにを思っているのかまた、じっと私の顔を見ている。なにを言われるのだろう……。こんな私が、失敗ばかりして、なにも言われないはずがない。この店辞めろ、要らない、足手まといだと言われるのだろうか……。そんなことしか思いつかない。 まるで、ここだけ周りから切り離されたみたいに感じる。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加