千の鶴を殺しても

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数ヶ月経ってもあの()、露草は相変わらず慣れない様子で仕事をしている。 近頃は裏方よりも、三味線芸者の姐さん達の後を付いて歩いている姿を見るようになった。芸者見習いになったのか? それにしては三味線を持っているのを見たことがない。 それまでも、今も、特に話すことはなく、互いに顔と名前は認識しているが、たまに、俺から声を掛けるていどの間柄。 声を掛けると言っても、重そうな物を持っているときに、「大丈夫?」とか、あやふやそうなときに、少しばかり助言するていど。すれ違って挨拶はするけど、いかにも礼儀としてするようなもの。それだけの関わり。誰かと話しをしたり、話しかけられているのを見たことない。
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