千の鶴を殺しても

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誰も他人に構う余裕なんてない。自分のことて精一杯。余計な口や手を出す者は居るけど、それを誰も(かば)いやしない。無益な火の粉なんて浴びたくない。そんなもん。 だからあの娘がなんて言われているかは、知っている。くだらない噂話があちこちから入ってくる。知っているけど、知らないフリして適当に相槌打って、聞き流し過ごしている。そんなこと、俺には関係ない。 淡々と確実に季節は巡る。この店の灯籠のように繰り返し、あの娘がこの店に来てから四度目の季節。
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