千の鶴を殺しても

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ここは夜になるとひときわ賑わう花の街。 色どり咲き待つ花を求めて男達が毎夜毎夜と集まってくる。そんな街の最奥地に建つ(えん)屋で俺は、雑用係として働いている。ただひたすら働いていた。 「あんたなにやってんのよっ! 早く作り直しておいで、間に合わなくなる」 「は、はい。すみません。どこですればよいのでしょう……」 「松の台所だよ。え? 場所がわからないの? なんにも知らないんだね」 慌ただしく準備をしている店の裏側。もうすぐ深夜になろうという頃は、いっそうごちゃごちゃと人が動き回る。
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