千の鶴を殺しても

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それから、俺には一生で一度きりだと思う夜が過ぎて行った。出来るものなら店を出て、一日でも早く身を立てて、大金積んで、客としてでも構わない。 もう一度、もう一度でいい、千の鶴を殺しても、あんたと朝寝がしてみたい……よ…… 太夫としてお披露目の日。大旦那に付き添われ花街を練り歩く道中の最中(さなか)、俺は傘持ちになり、優雅に(なまめ)かしく歩みを進める後ろ姿を見守っている。
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