千の鶴を殺しても

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漆黒(しっこく)の上半身から段々に薄墨になり、純白になるぶ厚い羽織には、一度(つがい)となれば一生離れることのない鳳凰二羽が、銀糸の雲海から今にも飛び出てきそうなほどに生々(いきいき)と飛んでいる見事な刺繍が施されている。 白い肌を際立たせる黒。何者にも染まらないと示す黒。誰よりも純粋で、潔白を示す白。 それら全て、太夫として誰よりも相応しい女がここに居ると、静かでありながら、威風堂々と表しているかのように見える。もう以前の露草の姿の影は、一切ない。
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