千の鶴を殺しても

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皆慌ただしく動きまわり、声をかける間も無い。そんななか、横から年配の男の人が声を掛けてきた。 「あんたやっちまったか、そこの奴に言いな」 (いか)めしい顔でぶっきらぼうに言われ、その人が目を向けている先に顔を向けると、またその人も、同じような顔つきで、じっと私を見ている。 奥の中央に据えられた高い台に、腕組みをして座り、睨むように周囲を見ていて、怒鳴るような声で指示を出していた、歳がいった強面の男の人。 「ほら行ってこい」と押し出すように背中を叩かれ、間違いなく、怒られるのだろうと思いながら、人の間を縫いながらなんとかたどり着けた。
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