千の鶴を殺しても

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その証拠に、私よりずっと下がった下座、(ふすま)のすぐ横で顔が合わぬよう、身体を横にしてに座っている。これが、太夫となった私と菊丸の距離。 もし、私が声を掛けたとしても、必要最低限の返事しかしてはいけない。 誰よりも近くに感じたのに、とても遠くなってしまった。それでも、後悔はしていない。 襖越しに菊丸は呼ばれたらしく、手をつき頭を下げ、かしこまった退出の言葉を言い、出て行った。
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