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暗闇の中で思い浮かべるのは過去に吐いた嘘だった。
絢爛豪華な調度品にまみれて退屈そうにあの方に毒を吐いた過去が今更のように後悔していると感情が波のように襲ってくるのだから。
私のような者が牢屋には似合わない。
私のような人が牢屋なんかで守られてはいけない。
この國はやがて戦争を起こすのだろう。
その時私は晴れて民衆の前で青空を拝めるのかもしれない。
引き摺り出された私はもう時間の感覚すら分からなかった。
「このスパイめ! 何が「平和の象徴」だ!」
「裏切り者! お前の國を信じたばっかりに俺たちは!」
石を投げられてもぶつけられてもどうでも良かった。
私は「嘘」を吐き出した。
「貴方たちなど、どうなってもよいわ! 妾はこの國が好きではないッ! さっさと滅びよ! 忌々しい・・・」
私は断頭台で罵声を飛ばす。
生涯初めて吐いた嘘は弁明の機会など無くともこの「嘘」を愛している。
暗闇の中、何も見えず自身すら見えない世界で。
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