第一章 Illegitimate Child

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第一章 Illegitimate Child

 五体を包む流体の生温かな圧力は、真冬の川底で死を待つ小魚の瞳の物寂しさを伝えていた。  母の羊水での出来事を、私は今も記憶の隅に(とど)めている。  死にゆく子を閉じかけた細い目で見つめ、小聡明(あざと)く口端を上げる美しい女神の御影を、鈍痛に揺らぐ暗闇の私の眼球は確かに捉えていた。  優美巧妙な容貌に、金色(こんじき)のまばゆい光背を冠した女神は、彼岸の純白の装束を束ねて半跏(はんか)し、私の死を遠まきに、卑俗で低能な家畜を(たの)しんでいるように見える。  ただ、そうして自らの死を見世物にされているのにも関わらず、私は女神の古拙的な笑みの神々しさに一目で見惚れた。そして全身全霊の苦痛に耐えながら女神に請うた。  苦しんで死ぬならば責めて、あなたのような美性の化身に看取られて逝きたい――  もう死が近い予感があった。  私が願うと、しかし女神は一変して写実的に酷く哀しげに、慈悲深い顔を私に向け、無言の闇に散っていった。  そして私の視界が闇を両断すると同時に、けたたましいばかりの激しい白光に包まれたのは、女神が消え去ったすぐ後のことである……私はあっという間に目を眩ませ、羊水の泡沫(ほうまつ)に溺死するように……意識を失った。……
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