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第2話 天国かもしれない
「…っ…。」
俺は目を開けた。
「…生きて…る?いや、死んだのか…?」
頭に残る鈍い痛みで、我に返った。
身体はどうなっているのか、怖くて動かせない。
そうだった。
サーフィン中に俺は、気を失ったのだ。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。
「…ここは、どこだ?天国…か?」
いや、俺のことだから、地獄かもしれないな。
享年32歳ってことか。
仕事の資料、もう少しで仕上がるところだったんだけどな。絶対契約取れるって、気合い入ってたのに。
今月末のフットサル大会、俺がいない分のメンバー集め、間に合うかな。今回は優勝狙ってたのによ。
あー、割と出てくるもんだな。
まあまあ後悔しないように、生きてきたつもりだったけど。
結婚もしていないし、葬儀は実家でしめやかに、ってなわけか。
色々手を焼かせてきたこんな俺だけど、この歳になって親の悲しむところは、正直もう見たくねぇな。
「はぁ…。」
ため息と同時に、涙が溢れ落ちそうになる。
「俺の人生、何だったんだろうな。」
流れる涙を拭おうと、持ち上げた手をみて気が付いた。
「…?重っ…。なんだ…?」
誰かの手と俺の手が繋がれている。
何とも言えない恐怖感と激しい動悸を感じながら、その手の先に繋がる身体に、そうっと視線をずらしていく。
そこに居たのは、見慣れた顔の人物だった。
「真……真司っ…?」
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