うそつきの理由

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   そんなことがあっても、それからも、俺は聡と一緒に学校を出て家までの道をたどる。  美咲の家は俺たちとは反対側に位置している。その所為もあるだろう。 でも、いいのか。帰りがけに二人で一緒に語り合ったりしたいとは思わないのだろうか。  それとも俺の知らないうちに、二人はどこかで二人だけの時間を過ごしているのだろうか。 「おまえさ。美咲とはどんなところに出かけたりするんだよ」  視線を合わせないようにして、何でも無いことのように聞いた。 「え……あ、うん」 「なんだよ。秘密かよ」 「いや。……あんまり、一緒に出掛けたりしてないんだよな」  聡が照れくさそうに頭を掻いた。少し栗色が掛かった髪が夕陽に照らされて反射する。 「え……そうなのか」 「うん……」 「なんで?」 「ま、いろいろと忙しくて」  変にごまかしているような言い訳じみたことを言う。学生の忙しいなんて、たかが知れている。部活に明け暮れていても、こうして俺と一緒に帰ることもできる。 「美咲は文句言わないのか?」 「うん、まあ。電話とかはしてるし」 「……へえ」  電話……か。  そうだな。恋人同士の特権のようなものだ。俺も美咲のラインは知っているが、メッセージのやり取りをすることはあっても、ライン通話で直接話したことはない。  毎日……話しているのだろうか。この、聡と美咲は。 「でもさ、なんか、電話って変に緊張するよな」  聡が他人事のように斜め上に視線を投げながらそう口にする。 「なに、言ってんだよ。付き合ってんだろ」 「はは。付き合ってるからなのかな」  はたっと聡が真剣な瞳で俺の顔を見た。  それは、美咲は自分のものだと俺に確認しているかのように。 「雄司と話してても緊張しないけどな」 「あたりまえだろ」  俺は呆れたように溜め息をつくふりをした。
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