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ある時、よその村で鬼が出たという噂が広がりました。そしてついに、鬼は隣の村までやってきました。そろそろこの村にも鬼が来るのではないかと、みんな心配していました。
ある日、四桃はいつものように村で手伝いをしていました。
桃太郎は、ただ一人、村外れの川で遊んでいました。
桃太郎は、おばあさんが洗濯をするこの川が大好きなのです。自分たちが流れてきた様子も、いつも聞かされていましたから。
いつものように川の中の石をぴょんぴょん踏んで遊んでいると、なんと山の方から鬼がやって来るではありませんか。それは青く、角が二本の鬼でした。
桃太郎は、慌てて近くの家に飛び込みました。
そこにはお父さんと子どもが住んでいました。お父さんは猟師で、力桃には負けるけれど、体が大きくて丈夫でした。
「おや? 君は……もしかして、桃太郎かい?」
四桃のことをよく知っていたお父さんは、その誰でもないこの子は桃太郎だと思いました。
桃太郎はそれには答えず、慌てて言いました。
「鬼は来ません!」
「あはは、そうだな。この村には鬼は来ないな」
お父さんは優しく返します。
違う、そうじゃないのに。桃太郎は必死です。
「鬼は来ません! 安心してください!」
桃太郎の目は、涙でいっぱいでした。お父さんを力強く揺さぶるけれど、何も伝わらないのです。
不思議に思った子どもが、家の外を見ました。そして、こちらに鬼が来るのを見つけました。
「父ちゃん! 鬼が来る!」
お父さんは目の前にいる桃太郎の目を見ました。
そうか、お前はこれが言いたかったんだな。でも言えなかったんだ。
お父さんは桃太郎を抱きしめると、力強くうなずきました。
そして、子どもと桃太郎を裏口から逃しました。
「走れ! 村のみんなに伝えろ!」
お父さんは戸口に立て掛けてあった斧を手に取りました。
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