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その晩のこと。
桃太郎は一人、旅支度を始めました。
「鬼退治に行かない」
桃太郎は言いました。
おじいさんおばあさんも、四桃も、みんな桃太郎のことを止めたけれど、聞き入れられません。
おじいさんは桃太郎に刀と「日本一」の旗をあげました。
おばあさんは桃太郎にきびだんごを作って持たせました。
桃太郎は準備を済ませると笑顔で戸口に立ちました。
「みんなのことは大嫌いです。でも、自分のことは大好きです」
それだけ言って、出て行きました。
おじいさんおばあさんも、四桃も、桃太郎が「大好き」と言うのを初めて聞きました。
一番、桃太郎に言ってほしい言葉だったけれど、一番言ってほしくない言葉でした。
桃太郎のいなくなった家は、とても寂しくなりました。
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