15人が本棚に入れています
本棚に追加
結局、奥園のせいでお昼ご飯が食べられなかった。しかも“キス”なんかされたせいで、その後の授業は全く頭に入らなかった。
授業が終わり、里香と校門までの道を歩く。
「はぁ……」
「なんか今日はいつにも増して凄いため息だけど……何かあったの?」
里香が奈々未の顔を覗き込みながら言う。
「もう何から喋ったら良いか分からない」
「ごめん! 色々話聞いてあげたいけど、今日光輝とデートなんだ」
そう言うと、里香は奈々未に向かって手を合わせる。
「うん、大丈夫。私のことは気にしないで」
少し歩いてから交差点で里香と別れ、奈々未はトボトボと自分の家までの道を歩く。目の前を歩くカップルが、手を繋いで楽しそうにしているのを見て少し胸がざわついた。
もうこの歳になったら普通の恋愛をしなきゃいけないのだろうか? いつまでも王子様なんて待っていることはおかしいことなのだろうか? いい加減、現実を見なければいけないことくらい自分でも分かっている。でも、ここで諦めるのは何だか違う気がした。
家に着くとベッドに倒れ込むように寝転がる。
目を閉じて、幼い頃に会った王子様を思い浮かべる。しかし、顔には靄がかかっており、はっきりと見えない。奈々未はゆっくりと目を開ける。
「もう、諦めた方がいいのかな……」
寝返りを打ち、もう一度目を閉じると、今度は何故か奥園の顔が出てくる。
「なんでアイツの顔が!」
奈々未はブンブンと頭を振った。そして、今日奥園にキスされたことを思い出してとんでもないファーストキスになってしまったと頭を抱えた。
最初のコメントを投稿しよう!