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「悔しいから仕返しぐらいしてもいいだろ?」
そう言って奥園は、ゆっくりと奈々未に顔を近付ける。これ以上暴れても意味が無いと悟った奈々未は、完全に白旗を上げた状態だ。唇がもうすぐで引っ付くんじゃないかというところでタイミングよく予鈴のチャイムが鳴った。
「はぁ……いいところだったのに!」
「も、もう戻るから!」
慌ててお弁当を片付け始める奈々未を見て、奥園は満足そうな顔で見ていた。
「放課後、勉強教えてやるから」
その声を背中で聞きながら、奈々未は足早に屋上から走り去った。
「何なのよ、アイツ……」
こっちが大人しくしていると思ったら好き放題やって、人の事を何だと思っているのだろう。
「あっ……」
でも勉強を教えてもらわないといけないことを思い出し、言いたいことを飲み込んだ。
午後の授業を受けてから、約束通り奥園が勉強を教えてくれることになった。空き教室に来いと言われたので行くと、もう既に奥園が座っていた。
「遅いって」
「いや、アンタが早すぎんの」
授業の終わりまで隣にいたはずなのに、一体どんなスピードで走ったらこんな早く来れるのだろう。もしかしたら、瞬間移動でも心得ているのだろうかと考えて心の中で少し笑ってしまった。
「ほら、突っ立ってないで早く始めるぞ」
「はい、お願いします。先生」
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