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「王子様探すって言ってただろ?」
「あぁ……うん。覚えてたんだ」
「当たり前だろ? 奈々未、そいつの特徴とか覚えてないの?」
奥園はクルクルとシャーペンを回しながら、聞いてくる。
「それが全く思い出せないの。思い出そうとしても顔に靄みたいなものがかかってて」
「……それでよく探し出すって言ったな」
「それはアンタが言ったんでしょ!」
「お前がそんな態度じゃ探さねぇぞ」
そう言って奥園に少し怒られてしまった。奈々未が慌てて謝ると、冗談だからとクルクルと回していたシャーペンを今度は鼻の下と口で挟んだ。
「それで、そいつの年頃は?」
「私と同じくらいだったと思う」
「その時の服装とかは?」
「あんまり覚えてないけど、紺色のベストにシャツ着てた気がする」
「その年の割に随分ませたガキだな」
「そうなの。おしゃれなお坊ちゃんって感じだった」
奥園は奈々未に質問の答えを聞きながら、シャーペンでサッと絵を描いていく。
「こんな感じ?」
そこには顔だけ描かれていない少年の絵があった。それは奈々未があの日出会ったの王子様そのものだった。思わず、奥園の手から紙を奪い取る。
「うわ、アンタ絵も描けるの?」
「だから俺は完璧だって言ってるだろ?」
「……性格が良けりゃ完璧だったのにね」
「だから性格もいいって」
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