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それでどこが性格がいいのだと心の中で思いながらも、口には出さなかった。
「でもこんな絵描いてどうするの?」
「お前、昔から引っ越ししてないだろ?」
「うん、してないけど」
「だったら探してる王子様がその時奈々未と同じくらいの年頃だったとしたらこの学園にいる可能性もなくはないだろ?」
確かにあの時から奈々未は引っ越ししていない。そして、奈々未の家から一番近い高校がこの有徳学園だった。だから同じ小学校や中学校の人も多かった。あの当時近くに住んでいた場合、この学園にいる可能性はあるかもしれない。奥園はそう考えたのだろう。
「でも同じ小学校とか中学校だったらさすがに私も分かるよ」
「お前、全員の顔はっきり見たの?」
改めてそう言われると、自信を持っては言えなくて口篭る。
「いや、そういう訳じゃないけど……」
「だったら分かんねぇだろ? この校区に住んでいたとしても、違う小学校や中学に行ってるやつもいるだろうし」
「でも引っ越してたら分かんないじゃん」
なんせ、十年も前の出来事だ。そんなにすんなりと見つかるとは思わない。
「なんで頭ごなしにそう決めつけるんだよ。可能性がゼロじゃない限り、やるしかねぇだろ?」
奥園は真っ直ぐと奈々未を見つめていた。
「王子様、見つけたいんだろ?」
奥園の言葉に何も言わずに頷けば、奥園は奈々未の頭に手を置いた。
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