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「じゃ、まずこの学園、虱潰しにするぞ」
「えっ? どういうこと?」
そう言うと、奥園はカバンから紙を出してきた。
「名簿ゲットしてきた」
「どこからそんなのゲットしてきたの?」
「俺の人脈にかかればこんなもん一発だ。とりあえず明日から休み時間、学園中回るぞ」
奥園が言った通り、次の日から休み時間の全てを使って学園中を回ることになった。一つ一つ教室へと行き、ひたすら顔を見て名簿でチェックした。
「どう? それっぽいやついる?」
「だから思い出そうにも顔に靄がかかってて分かんないの」
「お前だけが頼りなんだからな」
「多分いないと思う……」
正直十年もあれば顔は変わっているだろうし、分からなかった。でも、ここまで奥園が真剣になってくれているのに投げ出す訳にはいかなかった。自分のおぼろげな記憶を頼りに顔を見ていく。
「ここもダメか……」
どんどんと教室を回っていくにつれて、名簿のバツマークが増えていく。そして、いよいよ最後の教室まで回ったが、王子様らしい人物を見つけることが出来なかった。
「やっぱりいなかったか」
「しょうがないよ、十年も前のことだし」
それにしても奥園が思っていたよりも真剣に王子様を探してくれている姿を見て、奈々未はとても不思議だった。
「なんでこんなに真剣に探してくれてるの?」
昼休みに教室を回った後、廊下を歩きながら奥園に聞く。
「そりゃお前の為に頑張ってるんだよ」
「……ありがと」
「素直で宜しい」
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