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どうしようと途方に暮れていると、トイレの外から声がした。
「奈々未! いるか?」
その声は紛れもなく奥園だった。奈々未は恐る恐るトイレの個室から出て、外まで出る。奈々未の姿を見て、奥園が驚いた顔をする。
「お前……どうしたんだよ! ずぶ濡れじゃん!」
「ちょっとあんまり見て欲しくないんだけど」
「わっ、ご、ごめん!」
そう言うと、慌てて奥園が目線を逸らす。
「一体何があったんだよ」
明後日の方向を見ながら、奥園が奈々未に聞いてきた。
「トイレの中に入ったら、いきなり上から水かけられて……」
「はぁ!? ちょっとここで待ってろ」
そう言うと、奥園はどこかへ走っていった。少ししてから奥園が戻ってきて、ジャージを奈々未の肩にかけてくれた。
「とりあえずこれでも着とけ」
「ありがとう……でもなんで奥園がここに?」
そう言うと、奥園は鼻の頭をポリポリとかきながら答える。
「お前がなかなか戻ってこないから嫌な予感がするなって思って、そしたら八乙女真凛と何人かがトイレから出てくるのが見えて」
そう聞いて、やっぱりあの笑い声は真凜だったのだと確信した。
「ちょっとアイツに文句言ってくる」
歩き出そうとする奥園の腕を慌てて掴んだ。奥園が直接何か言うことで、真凛に変な刺激を与えるようなことは出来るだけ避けたい。
「ちょっと待って、大丈夫だから」
「だって元はと言えば俺のせいでこうなってるんだろ? 文句言わねぇとまたやられるぞ」
奥園はとても必死な顔をしていた。
「……アンタって意外と優しいんだね」
「意外とっていうのは余計」
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