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「私が来たことを知ったら一緒に帰るとか言い出すかもしれないですし、真面目に部活頑張ってるのに邪魔したら悪いので」
「確かにアイツなら言いかねない」
そう言って宗治先輩が肩を揺らしながら笑う。そんな宗治先輩に一礼して、奈々未は学校を後にした。
真剣にサッカーをしている奥園の姿は確かにかっこよかった。みんながキャーキャー言う気持ちがほんの少しだけだが、分かったような気がした。結局その日は寝る時まで奥園の姿が頭から離れなかった。
次の日の朝、家から出るといつものように奥園が立っていた。
「おはよ」
「……おはよう」
昨日の姿を思い出すと少し意識をしてしまっている自分がいて、思わず頭を振った。そんな奈々未のことなんて奥園が知る由もない。今日も相変わらず、奈々未の手を握って学校まで行く。もう周りの視線にも少し慣れてきた。
教室に着くとみんな奥園に挨拶はするものの、近づいてくることはない。それくらい奈々未の存在が大きいのだろうか。
今日も授業が始まる。
「今回のテストが悪かったやつは夏休みに補習があるからなー」
先生からの言葉に青ざめる。夏休みが近いということはテストも近いということだ。最近奥園に振り回されていて正直勉強どころではなかった。夏休みに補習があるなんて、全く考えていなかった。夏休みを目一杯遊び尽くそうと思っていた奈々未にしたら大誤算だった。
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