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「ねぇ、夏休みに補習なんて嫌だよ」
いつものように屋上で昼ご飯を食べながら、奥園に愚痴をこぼす。奥園は地面に寝そべって、ぼんやりと空を見ていた。
「なんでお前はそんなに勉強出来ないんだよ」
「だって元から嫌いだし、最近は王子様探しとかしてて全然勉強に集中出来ないし」
「それって俺のせいにしてる?」
寝そべっている奥園が顔だけこちらを見ている。
「こっちはお前のために王子様探ししてるってのに」
「すいませんでした。自分のせいです……」
そう言うと奥園はおもむろに起き上がり、奈々未の前までテケテケも歩いてくるとその場にしゃがんだ。
「分かったから、週末俺の家来い」
「えっ?」
「今回のテストの点が良ければ補習はないんだろ? ちょうどテスト前で部活も休みだし、俺が勉強教えてやるよ」
「さすが! 奥園先生!」
「お前ってほんと世話が焼けるやつだな」
「ありがとうございます!」
「その代わり」
そう言った瞬間、チュッと音を立ててキスをされた。
「ちょっと……」
「これで俺に勉強教えてもらえるんだぞ? 安いもんだろ」
「最悪……」
本当に油断も隙もない。少し胸の鼓動が早くなっていることに気がついて、奈々未は小さく深呼吸をした。
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