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もう十年以上前の話になる。奈々未がいつものように友達と公園で遊んでいた時のことだ。みんなでかくれんぼをする事になった。
「いーち、にー、さーん」
鬼役の友達が数を数え始める。奈々未は、目に入った公園の隅にある小さい物置に隠れることにした。中へ入ると、微かに外の明かりが入ってくる程度でほぼ真っ暗に近かった。外の声を聞けば、奈々未以外の子はすぐに見つかっていく。そして、奈々未を探す声が聞こえる。見つけられないことが面白くなった奈々未は、そのまま暗い物置の中で待つことにした。
しかし、友達の声がどんどん遠くなっていった。そして、その声は完全に聞こえなくなってしまった。さすがに心細くなった奈々未は、物置から出ようと扉に手をかけた。
「あれ? なんで? 開かない……」
奈々未が入った物置は古くなっていたからか、一度閉まった扉は開かなくなっていた。何度も何度も力を入れても、ビクともしない引き戸。真っ暗な空間で、このまま見つけられなかったらどうしようと涙が溢れ出す。
「た、たすけて!!」
そう大声で叫ぶけど、公園の端にある物置。声も届かない。外から漏れていた明かりも少なくなって、どんどん夕闇も迫ってくるのが分かる。
「おねがい! 誰か助けて!」
パニックになり何度も何度も助けてと叫ぶが、誰かが来る気配もない。このままずっと、ここから出られなかったらどうしよう。
怖い、助けて。
そう思った瞬間、ガラガラと物置の扉が開いた。
「え……?」
開いた扉の前には、一人の男の子が立っていた。歳頃は奈々未と同じくらいに見えた。見たことない顔だったが、その顔を見て奈々未は声をあげて泣いてしまった。
「もう大丈夫だよ」
泣いている奈々未を見て、男の子はそう言って頭を撫でてくれた。
「何で分かったの?」
「呼ばれた気がしたから」
そう言って、男の子は笑顔で奈々未に微笑みかける。気がついたら、涙は止まっていた。
「あ、もう行かなきゃ」
「待って!」
そう言って、奈々未は歩き出す男の子を呼び止めた。
「また……会えるかな?」
「また会えるよ、きっと」
男の子はそう言うと、奈々未に笑顔を向けた。
「大きくなったら迎えに行くよ、僕のお姫様」
男の子はそう言うと、奈々未の手をギュッと握り、そのまま行ってしまった。
「王子様……」
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