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その後、いなくなった友達は奈々未の母を家まで呼びに行っていたらしく、母の姿を見て安心してもう一度大泣きしたのを今でも鮮明に覚えている。
「……探してないって言ったら、嘘になるかな」
名前も何も知らない王子様が、迎えに来ることをいつまでも待っているなんて自分でも馬鹿だと思う。でも、奈々未はどうしても諦めることが出来ないでいた。こうなることなら、あの時名前くらい聞いておけばよかったと肩を落とした。
「奈々未、可愛いのにもったいないよ」
「私はいいの!」
奈々未は、ふと隣の奥園を横目で見る。女の子に囲まれて、いい気になっているのだろうか。ヘラヘラと笑っている。自分の探している王子様とは似ても似つかない。もう一度深いため息をつくと、奥園は奈々未の視線に気付いてニコッと微笑んだ。
「うわ、奈々未! 王子様からファンサ貰ってるじゃん」
里香がそう言って冷やかすので、慌てて奈々未は目線を窓の外に向けた。
何故、アイツが王子様なんて呼ばれているのだろう? 何故、みんなあんなやつのことが好きなのだろう? 奥園の自信満々な態度が、奈々未は好きになれなかった。
そんなことを考えていると、始業のチャイムが鳴った。今日も一日が始まる。
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