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午前中我慢していれば、この地獄から少しは解放される。お昼のチャイムが鳴った途端、奈々未は足早に教室を出る。そして、立入禁止の看板をくぐり抜けて屋上へと上がった。
風がスカートをゆらゆらとなびかせる。きっと屋上の鍵が開いているのを知ってるのは、奈々未だけだろう。入学して少し経った頃、たまたま扉が開いていたのを発見してから、よくここでお昼を食べている。ここにはうるさい女子もいないし、ヘラヘラ笑っている奈々未の嫌いな奥園もいない。
奈々未が誰にも邪魔されない一人になれる場所だった。
しかし、今日は違った。いつものように屋上に上がれば、地面に寝転がっている人の姿が目に入る。先客がいたようだ。誰にもバレていない自分だけの場所だと思っていた奈々未は、少しショックだった。
「一体誰なのよ、もう……」
段々近づくにつれてその人物が誰なのか、嫌でも分かった。綺麗に茶色に染まった髪の毛に、少し着崩した制服……耳にイヤホンをつけてすやすやと眠っている。
「……奥園」
そこにいたのは、さっきまでキャーキャー言われていた奥園だった。よりによって、何故コイツがいるのだ。
「嘘でしょ……最悪」
奈々未はため息をついて、奥園の隣にしゃがみ込んだ。悔しいけど綺麗な寝顔で寝ている。仕方ないが、今日は他のところでご飯食べよう。
立ち上がった瞬間、奈々未は腕を掴まれた。
「うわっ」
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