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そのまま腕をぐいっと引っ張られて、気がつけば奥園の顔が目の前にあった。
「ちょっと! 何してんの!?」
奈々未は慌てて、奥園から離れた。そんな奈々未を見て、奥園は呑気に笑っている。
「よっ! 原田奈々未さん?」
奥園はそう言うと起き上がり、大きく伸びをする。
「……起きてたの?」
「うん。誰かさんが俺の寝顔に見惚れてたから」
「べ、別に! 見惚れてなんか……」
ないとは言い切れない自分に腹が立つ。確かに綺麗な寝顔だったが、認めてしまうのは何だか悔しい。
「ていうかなんでどっか行くんだよ」
「だって……」
「一緒に飯食おうよ」
「誰がアンタとなんかご飯食べるのよ!」
奈々未がそう言いながら屋上を後にしようとすると、奥園は奈々未の背中に話しかける。
「毎日毎日俺のこと、うっとおしいって思ってるでしょ?」
思わず奈々未は振り返った。奥園はあぐらをかいて、奈々未の方を見ていた。
「正直、俺もあの女子達うっとおしいって思ってるから」
そこには王子様なんて言われているキラキラとした笑顔はなかった。これが奥園の本性なのか。
「何? 幻滅しちゃった?」
そう言って笑っている奥園を、奈々未は一喝した。
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