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彼女は僕の希望で、救いになった。
暗闇しか知らない僕を導いてくれるの神様だけだと思っていた。そして神様は救い、希望の象徴。だから彼女は神様だ。僕の希望の神様。
それからもずっと僕は彼女の光にまみれていた。僕がそうしたかった。そうしなければ再び闇に戻ってしまう気がして、そうせざるを得なかった。
彼女は僕の希望で、救いになる。
何度も殴られた拳はとても冷たかった。僕は両親がいないという事実が、彼らの何を駆り立てたのだろう。彼らのてのひらを握らせる同情がそこにあるとは思えなかった。そのてのひらの中にあるのはただのエゴだ。どうしようもなく汚れた人の暗闇。
小学生の喧嘩なんて、ただ思い通りにいかない世界に対するストレートな不満を、手頃な相手に無遠慮にぶつける作業に過ぎない。それをいじめと呼ぶことに違和感を覚えていた。それはただの闇なのに。でも彼女が僕にまとわりつく暗闇を払ってくれた。僕は間違いなく彼女に救われたのだ。
彼女は僕の希望で、救いになるはず。
殴られ過ぎて失神していた僕を救ってくれた神様。そして光の海に導く雫を落としくれた女の子が差し出したてのひら。彼女の手は確かに開かれていたはずなのに。それなのに、ねぇ、どうして。
――どうして君は知らない男の手を握っているの?
握られた手の中にあるのは何?
同情?愛情?それとも僕を想う何か?
……違う、全部違う。彼女の手の中にあるのは彼らと同じ。神様が持っているはずのない暗闇。
「――ねぇ、全部エゴだったって言うの?」
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