窓の向こう側

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 ――救われるかもしれない。それが終わりの始まりだった。  当時私自身は、しつこくつきまとってくる男子生徒に辟易していて気が触れていたのかもしれない。よく考えもせずその手を取りに階段を駆け下りた。  たぶん、その時私はチャンスだと思った。 「彼に手を差し出して、彼がその手を取ってくれれば私を好きになってくれると思ったんです。そうすれば、つきまとってくるアイツを遠ざけられるかもしれない。私が一人の男子生徒と行動を共にしていれば、私には彼氏がいるんだと諦めてくれるはずだと。笑っちゃいますよね、あまりに短絡的な考えで。まぁ結果的に中学校までそれは上手く行きました。ソイツはストーカーを辞め、大人しくなりました。でも……」  流石に高校まで同じだと思わなかったのだろう。あるいはソイツの心境の変化、狂ったベクトルに心が向いたのか。どちらにしろ今となっては真相は闇の中だが、再びしつこく言い寄って来るようになったのだ。 「うんざりしました。小学生の足りない頭で考えた作戦は、頭の良い高校生には通じなかった。当然のことです。でも私は今更彼と一緒にいることを辞められない。(つたな)い打算的な考えで彼に好意を持つよう仕掛けたのは私だからです。私が責任を取らなければいけません。責任を取るために、ストーカーと付き合うフリをすることにしました。彼を……いじめよりもっと暗い海に溺れてしまった彼を助けるために。恋人のフリは苦痛でしたが、後で警察に相談するつもりでした。証拠は抑えてもらっていたので、きっと停学か退学になるはずです。それで全て収まればいい。そう思っていたのに、駄目でした」
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