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「あの、ちょっと待ってくださいよ。まだ写真のチェックが……」  岩崎は慌ててパーテーションの中へと入っていく。  ピシャー! ゴロゴロゴロ! 「きゃぁー!」  突然、巨大な雷鳴が轟く。同時に、情けない叫びを上げる警視総監。 「えっ、うそ、真っ暗やん……」  岩崎のか細い声が、さざ波のように流れていく。室内は真っ暗闇に包まれている。どうやら停電したみたいだ。 「すげえー! 映画館みたい!」 「ちょっと怖いけど……ワクワクする!」 「ふひひ……この暗闇に乗じて、我輩は山本さんにセクハラを……」  想定外のハプニングにも関わらず、子供達は、盛り上がっている。 「おーい岩崎君。中継が始まっちゃうよー! 急げー!」 「そうだ……早く準備を……」  ナメクジのように床を這い、プロジェクターの元へと向かう岩崎。 「それでは撮影スタート!」  スカーフ男の甲高い声が、暗闇の中に響き渡った。
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