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鬼の顔をした車は、信号無視をするマナーの悪い運転手。サングラスをかけた男はお菓子で誘拐を企む変態。のつもりだ。
これらは全て岩崎が演じている。国道の真ん中で、車のコスプレをしてブーブー喚く姿は、どうみても不審者だった。実際に警察を呼ばれたし。
ちなみに、A4用紙10枚分にわたる台本は、全て暗記したので家に置いてきた。自信たっぷりである。
「会は13時から……あと30分。さて、身を隠すか」
寝言のように呟き、あくびを噛み殺す岩崎。軽く目をこすりながら、角に束ねてあるパーテーションを引きずり出し、プロジェクターのレンズだけが表に出るように、一角を覆う。
相手にするのは、わんぱく盛りの子供達である。機材にイタズラされては、会が台無しになる。
「ふっ、完璧だ」
1畳ほどの作業部屋を完成させて悦に入る……そんな岩崎を驚かすように、勢いよくパーテーションが開け放たれた。
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