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「おっ……岩崎君! あのマダム、三ヶ月前に、主人を下着泥棒と間違えて大騒ぎを起こした服部(はっとり)真奈美(まなみ)さんじゃないか?」  いつの間にか岩崎の背後に立っていたびしょ濡れの犬山が、拡声器を使って事実を述べる。  会話を楽しんでいたママ友グループは、一瞬で表情を凍らせた。  服部さんは子供を抱き抱えて、窓から飛び出した。 「……署長。銭湯にでも行ってきたんですか?」  岩崎は、くしゃくしゃになったハンカチで自分の汗を拭きながら言った。 「突然のゲリラ豪雨に、身も心もズタズタにされたよ……」  視線を外へと向ける岩崎。昼間にもかかわらず、外は薄暗い。耳を澄まさずとも、(ひょう)と間違うような激しい雨音が、室内にも響き渡ってくる。 「それで服部さんに八つ当たりを……はぁ……署長。もう始めますか?」  岩崎は、犬山から拡声器を取り上げながら言った。 「そうだね。今、警視総監を連れてくるから!」  ポケットから飴玉を取り出しながら、署長は立ち去った。
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