25人が本棚に入れています
本棚に追加
「おっ……岩崎君! あのマダム、三ヶ月前に、主人を下着泥棒と間違えて大騒ぎを起こした服部真奈美さんじゃないか?」
いつの間にか岩崎の背後に立っていたびしょ濡れの犬山が、拡声器を使って事実を述べる。
会話を楽しんでいたママ友グループは、一瞬で表情を凍らせた。
服部さんは子供を抱き抱えて、窓から飛び出した。
「……署長。銭湯にでも行ってきたんですか?」
岩崎は、くしゃくしゃになったハンカチで自分の汗を拭きながら言った。
「突然のゲリラ豪雨に、身も心もズタズタにされたよ……」
視線を外へと向ける岩崎。昼間にもかかわらず、外は薄暗い。耳を澄まさずとも、雹と間違うような激しい雨音が、室内にも響き渡ってくる。
「それで服部さんに八つ当たりを……はぁ……署長。もう始めますか?」
岩崎は、犬山から拡声器を取り上げながら言った。
「そうだね。今、警視総監を連れてくるから!」
ポケットから飴玉を取り出しながら、署長は立ち去った。
最初のコメントを投稿しよう!