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久しぶりの再会に、私は思わず恐怖を覚えていた。
「分からないところがあるから、勉強を教えてほしい」と言った相手は、まさしく私の従弟の凌馬である。だが、その姿は私が知っている凌馬とは大きく異なっていた。野球をやっているため、坊主頭なのは相変わらずだが、声も身長も体格も、喋り方も態度も何もかもが変わっている。
凌馬が中学生になり、学ランを見せに来た時以来会っていなかったため、もう四年会っていなかったことになる。四年でここまで人は変わってしまうのかと思うと、恐怖をつい覚えてしまった。
「凌馬、だよね?」
「そうだけど」
「本当に、凌馬?」
顔も大人びてるし、あれほど柔らかな笑みを見せていた凌馬の姿はもうどこにも見当たらない。そこにいるのは、ただ無表情で私を見下ろす見知らぬ人間だった。ゲームをしながら、一緒にはしゃいでいた思い出がまるで嘘かのようだ。
「変わったね……」
「そう? 四年会ってなかったんだから、そう思うだけじゃない?」
そう言って凌馬は靴を脱ぐと、ズカズカと私とママの布団が敷いてある部屋へ行く。今は夏休み、祖父母の家に帰省中なのだ。
祖父母は自営業のため、一階にある職場で働いている。もう定年もとっくに過ぎているから、今まで働いた分休めばいいのにとママは言うけれど、二人とも頑固なため、頑なに意見を変えようとしなかった。ママは職場で丁度働いているところだ。今、祖父母の家にいるのは私と、凌馬、そしてトイプードルのココアだけとなる。
私は凌馬の後を追うと、凌馬は机の上に荷物を置いて、勉強用具を取り出していた。
「真由子、大学どこだっけ?」
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