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一部の週刊誌は、例の忘年会に参加していたプロデューサーや他のキャストの「証言」を載せて、「不倫」そのもの自体が無かったことを報じてくれていたけど、無駄だった。
一度負の感情に火が付いた人間というのは、フェイクニュースだと判明した後でも信じることを止めない。むしろ、「真実」をこそ「嘘」と思い込んで、更に過激な行動に走るものだ。
SNSには更に質の悪い攻撃が続き、同時に事務所への嫌がらせ電話や恫喝の封書も増えた。
当然、私の仕事も激減した。
十代の頃からこつこつと小さな役で下積みを重ね、二十代半ばでようやく花開いた私の女優人生に、大きなケチが付いてしまったのだ。
「すまん、亜理紗……。俺が『バラエティ番組で顔を売れ』なんて言わなければ……」
社長はエセ関西弁を忘れる程に責任を感じていた。
乗り気でなかった私にバラエティの仕事を強く奨めたのは、社長自身だったのだ。それがこんなことになるなんて、思いもよらなかったことだろう。
「社長が謝る事ではないです。悪いのは全部坂川なんですから」
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