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バーニング・ファイア
「亜理紗。これ、どういうことや?」
社長室に入るなり、社長がいつものエセ関西弁でぼやきながら、何かの雑誌を見せてきた。
どうやら写真週刊誌らしく、見開き二ページにわたって『人気女優A深夜の密会! お相手は妻子持ちのベテラン芸人S』という大きな見出しと、目線の入った男女が食事しながら親し気に話している写真が掲載されている。
目線が入っていても分かる。女の方は私こと『亜理紗』だ。男の方は、バラエティ番組で共演している坂川というお笑い芸人だろう。イニシャルが一致するし、多分間違いない。
問題は、私には坂川と「密会」等した覚えがない、ということだ。
「全く身に覚えがありません。坂川さんと二人きりになったことは一度もありませんし」
「……だよな。じゃあ、坂川さん含めて大勢で飲みに行ったりはあるか?」
「それは……ありますね。番組のプロデューサーに誘われて、忘年会になら。一度だけですけど」
昨年末、くだんのバラエティ番組のプロデューサーに乞われて関係者の集まる忘年会に行ったことがあった。
坂川とスタジオ以外で行動を共にしたのは、その時くらいのはずだ。もちろん、他のキャストやスタッフも大勢いたので、二人きりではない。
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