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「お父さんを忘れないでね……」
親父はそう言って駅まで見送りに来てたが、なんで温泉旅行に行くだけなのにその台詞が吐けるんだよ。毎年ゴールデンウィークは伊織先生のスタジオメンバーで温泉旅行に行く。親父は大型車が運転できるため、毎年運転手してたけど、今年は母さんが妊娠したので、家のことをやるために親父は来ない。
俺を涙目で見送ったが、帰ったら母さんとイチャイチャしてるのが目に見えるので、俺は棒読みで「ワスレナイヨ」と返した。こういうの茶番って言うんだよね?
今年は電車で旅館に向かう。だが伊織先生はアッキー&マッキーと車で向かっている。今年は伊織先生は出発前からぐるぐる巻にされてさるぐつわをされ、さらに目隠しされている。
女の子大好きの伊織先生と一緒に電車に乗るとか苦労の種が絶えないので、早すぎる先手を打った。これでのびのび電車旅できる。
「瑠璃は親父さんがいなくて寂しくないかい? 」
タッくんがワクワクしながら俺に聞いてくる。みんなワクワクしながら俺の返答を待つ。
「いや。俺もう高校生なんだけど? 」
「いやいや。親父さんは瑠璃くんにベッタリじゃないですか。何気に仲良しですし」
あんまり表情を変えない五丁目さんもなんかワクワクしてる。
「うーん。嫌いじゃないけど、鬱陶しいかな? 」
「瑠璃くん、反抗期かな? 」
うたうものさんもワクワクしてる。俺、反抗期ってあったかな? てか、俺が親父にかかと落とし食らわせるときって大体親父が悪いし……。
「まぁまぁ。瑠璃くんが親父さん大好きなのは、みんな分かっているでしょう」
今回は親父の代わりに本乃編集長が参加している。上役がいれば伊織先生の牽制にもなるだろうとの見立てだ。
「僕、女体化チョコレートのルビーチョコ見つけたけど、みんないる? 」
香多くんは親父がいなきゃ寂しがると思ったが何気に平然としている。
「ルビーチョコの効果は何? そこが問題だよ! 」
良くん、食いつきがいいな。
「普通の女体化チョコレートと変わんないよ。なんか最近の女体化チョコレートはフレーバーの種類多くしてるんだって! 」
香多くんと良くんがワイワイしている中、げたんわくんは一生懸命スマホをいじっている。
「げた様、せっかくの旅行なんだからお話しましょうよ」
束砂さんは、げたんわくんをたしなめるがげたんわくんは厳しい顔で呟く。
「なんかさ……、親父さんと温泉旅行の間、メールしなきゃなんなくなった……」
親父……、なぜげたんわくんに……。
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