1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「瑠璃くんとやればいいのにね
ぇ」
更紗さんはケラケラ笑う。
「ま、瑠璃くんは素直に何があったか言わなそうだもんね」
薫蘭風ちゃんもクスクス笑う。
うん。俺、親父と四六時中メールとか無理。もともと俺あんまりメールとか好きじゃないし。親父なら尚更だし。学校の連絡事項と仕事のメールくらいしかしてない気がする。てか、みんな俺のことよく見てるね……。
何にせよ伊織先生のいない電車旅は快適だった。今年も去年と同じ旅館だけど、結構大きい旅館を貸し切りにしちゃうから伊織先生の財力はとんでもないんだろうな。
まぁ俺らのギャラも決して安くないんだけど。
とりあえず俺は旅館につくなりおみやげ屋さんを覗いてみる。その横にはげたんわくんと薫蘭風ちゃん。
「俺さぁ、なんか瑠璃の行動を親父さんにメールしなきゃなんないだよ……」
げたんわくんは、なんでそんな律儀なの?
「瑠璃くん瑠璃くん。この温泉まんじゅう、バジル味だって! 」
薫蘭風ちゃんはあわよくば俺に変なものを買わせようと変なものばかり勧めてくる。
「薫蘭風ちゃんも買うの? 」
「うん! 全部おばさんに食べさせてみる! 」
ちょっとだけ伊織先生が哀れだ。ま、気になるのは確かだし、変わった温泉まんじゅうもいいかな?
俺は母さんと親父におみやげとしてバジル温泉まんじゅうを買った。
「瑠璃、おみやげ購入っと」
げたんわくんがぶつくさ言いながらスマホに文字を打ち込む。監視かよ……。
「あとはおばさん来る前にみんなでお風呂だねーー! 」
薫蘭風ちゃんが元気よくはしゃいだ。
今回は、男湯、女湯、にょたチョコ男子湯と旅館が用意してくれたので、みんなで一斉に入れる。
ちなみに男子陣は親父がいないせいか大と徹は静かだ。率先して騒ぐのがいい大人の親父だからな……。
大事なのは伊織先生が来る前に温泉に入らなければならない。時間差ができないのは有り難い。伊織先生の覗きを阻止するためだけに毎年苦労するからな。
でもってみんなでのんびりお風呂。ゴールデンウィークの温泉旅行でこれだけのんびりお風呂に入れたのははじめてかも知れない。
ワイワイガヤガヤとお風呂で寛いで、みんなで一斉に上がる。げたんわくんは脱衣所でまたスマホをポチポチいじっている。
「げたんわくん、また親父とメール? 何打ってるの? 」
俺がそう声をかけるとげたんわくんは飛び上がった。
「る……瑠璃……」
げたんわくんはスマホを隠そうとする。
「どうしたの? 」
げたんわくんは後退る。スマホを背中にまわして。
「はーい。スマホいただき! 」
香多くんが、げたんわくんが背中にまわしたスマホを取り上げた。香多くんはその内容を目にする。
「香多くん、やめてーー!! 」
げたんわくんはスマホを取り返そうとするが遅い。
「えーと『瑠璃は今年もつるつるか? 』だって。げたんわくんの返信は『つるつるでした』だね! 」
げたんわくんが力なく崩れ落ちる。
「嫌だ! 嫌だ! かかと落としは嫌だーー!! 」
「うん。げたんわくん、よく分かってるね」
俺は足を高く掲げる。渾身のかかと落とし。げたんわくんは気絶した。
「おじさま、僕もつるつるだからーー」
香多くんが、自らの情報をげたんわくんのスマホを使って送っている。
「そうかぁ。親父さんは、やっぱり瑠璃が気になるんだねぇ」
タッくん、気にしかたが変なんだけど?
「げたんわくんなら簡単に答えると思ったのでしょうなぁ」
五丁目さん、それありがたくないチョイス。
「ま、かかと落としない瑠璃は瑠璃くんじゃないからねぇ」
うたうものさん、俺ってそうなの?
「まぁ、バスタオル巻いただけの状態のかかと落としなら親父さんは喜んだろうねぇ」
本乃編集長はケラケラ笑う。
なんかみんな勝手なことを言っている。
最初のコメントを投稿しよう!